自分が思っている以上に他人は自分を意識などしていない。
本を読む限り、他人の言動に必要以上に左右されてしまうのは、左右される他人を別の誰かと錯覚しているからだという。
その、「別の誰か」こそ今の自分を作り上げた張本人であり、まずそれを突き止める事が先決だと語っている。
真っ先に考え付いたのは、親だった。
私は親に期待されて育ったんだろうか。
…答えは否だ。私は施設にいた。親はたびたび面会に来てくれたが勉強の事なんて一言も口にしなかった。テストの答案を見せてもそれが良かろうが悪かろうが何も言わなかった。
じゃあ、何が私をここまでおびえさせるのだろう。
失敗をおそれているんだろう。
……誰にたいして?

父の顔を思い浮かべた。
今も昔も、父は私に何の期待もしてない。
楽をさせてあげたいとは思うが、今実家を離れ一人暮らしをしている事で少しはそうなっていると思いたい。
同居してるだろう弟をどうにかすれば、もっと気は晴れるだろうかとも考えるが、きっとそうはならない。
父は私とちがう。孤独が苦にならない私とは違う。

期待する人間の意に沿わない結果をした瞬間、私は傷つく。
その人が何か言う前に表情を変える前に、すでに私は傷ついていた。
…私を傷つけているのは私だ。
…私が私を傷つけていた。
…そうだ。
昔から、ずっと。

…。
…おやすみなさい。
今日は死ぬのにもってこいの日だ。
生きているものすべてが、わたしと呼吸を合わせている。
すべての声が、わたしの中で合唱している。
すべての美が、わたしの目の中で休もうとしてやって来た。
あらゆる悪い考えは、わたしから立ち去っていった。
今日は死ぬのにもってこいの日だ。
わたしの土地は、わたしを静かに取り巻いている。
わたしの畑は、もう耕されることはない。
わたしの家は、笑い声に満ちている。
子どもたちは、うちに帰ってきた。
そう、今日は死ぬのにもってこいの日だ。



……
木曜日。会社に行くと私の荷物がいっさいがっさい消えていた。
事務の人にそれらをまとめた袋を手渡され総務課へ行ってください、とお疲れ様でしたとにっこり伝えられた。
あぁ、こんな光景ドラマで見たことあったな、そう思った。
いつものように朝早く来たのは正解だった。
私は知り合いには誰一人会わないままに支度して、備品をすべて返却し、そして、彼女達が朝礼を受けている8時半には自転車置き場に戻っていた。
月曜日、そして火曜日。私は無断欠勤をした。そして抜かりなく携帯の電話番号の電源も切っておいた。
それが一番の決定打だったらしい。理由があれば、いついつには来れるという確信さえあれば、私はまだ会社に残っていたのかも知れない、と。
本当にぎりぎりの人数で作業をしていると、こうなる。
かくて私は、あっさりと会社を解雇された。
私は、私がそうなった直後の彼女達を想像しようとして、それを
瞬く間に断ち切った。…何も意味がないからだ。
彼女達との関係はここで終わった。
終わったんだ。

その日の12時待ち合わせて、この仕事を紹介してくれた派遣会社の人と話した。理由を聞かれ正直に答えた。
この人もやっぱり、私が音信不通の状態だったのが一番ダメだったと諭してくれた。すいません、衝動的に行為に及んだ私はただ謝るしかない。…もっと頼るべきだった、と。
保険証の返還や制服のクリーニング代等、手続きがあるので後日電話しますと話を締めくくり、別れた。

今朝は普通に6時半に起きた。
風邪の余韻か頭痛はするけれど熱は引いてるので問題ない。
パソコンの電源をつけながらひどく空しさを覚えた。
たぶんつきつめれば寒気すら感じるはずだ。
だから、やめることにする。
今の残高、23万円。
無駄遣いしなければ2ヶ月はやってけそうだ。
けど引きこもる気は毛頭、ない。
木曜日に買っておいたエクセルの教科書をめくる。
バイクの免許を取ってみるのもいいかも知れない。
お金の都合ですぐには無理だけど本を買って勉強するくらいは
誰にでもできる事だ。

堕ちる事だけは避けたかった。

首が痛い。動かすとボキボキ音がする。
整体にかかりたいが、そんな贅沢は言ってられない。
後日いいシップか磁気絆創膏か、そんなとこで頑張ろう。

覚悟してた。
だから、大丈夫。
たった半年弱。たったそれだけの経験だ。
辛い経験をいっぱいした。
…いいことだ。いいことなはずだ。
…そう、だよね…?
前々から気になっていた小説なんですがなんと図書館で発見!
「星の王子様」と一緒に借りました。
上下巻でけっこう厚いのですが…土曜日の今日、一気に読んでしまいました。すごい引き込まれた…
物語はロンドンの下町で暮らす小悪党のスウがキザな詐欺師の謀(とあるお城のお嬢様を落として財産を横取り!)に協力し、叔父と小間使いに囲まれ孤独な日々を送るお嬢様モードの元に侍女として仕える事から始まります。
小説は一人称で綴られていて、下町のすすけた日々に浸りきったスウの時々かいまみせる、お城の優雅な生活に対してピリリと辛味の効いた皮肉がまた面白い。
そして展開もまた。もう、なんていうか。目まぐるしく変化して追いつくのがやっとででも結末を知らずにはページを閉じられない。
ハラハラドキドキ、久々に「いい」ものを読みました。

互いに欺き欺かれ、その立場もまた目まぐるしく入れ替わりながら惹かれてゆく二人。愛情そして憎悪。結末は………

―あたしはナイフの刃を返した。刃にランプの明かりが反射し、モードの頬に光が飛んだ。
「あたしはここに、あんたを殺しに来たんだ」
母ちゃんが椅子の中で動いた。モードは異様に輝く眼であたしを見つめたままだった。
「あなたはブライア城に、わたしを殺しに来たわ…」
あたしは目をそらし、ナイフを放した。―

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